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小指 vol. 3 「砂時計」

「小指」





vol. 3 「砂時計」





ひとしきり二人で、小分けした下着の収納を見ながら
彼の異常なまでの几帳面さを笑った。

そして私達はベッドルームを出て、ダイニングへ行った。
イスをひき、目で合図をする彼。
どうぞ、ここにかけて。
と送ってくる信号。


小さな、グリーンのグラス。
日本酒をつぐ。
透明なガラスを透して、揺れている。


窓のそとは、夏の夕空。

部屋の中、夢のように漂う私。
キッチンに立つ、あなた。



「できた。」


おにぎりが2つに、たくあん。
椀には味噌汁。
ほうれん草とシーチキンの和え物。


手料理。


手料理が出てくるとは、想像もしていなかったので
私は嬉しくて、楽しい気分を隠せなくなっていた。

「いただきますっ。」

おいしい。
なんておいしいおにぎり。
ああ。おいしい。
なんておいしいお汁なん。
ほうれん草とシーチキンがこんなにも合うなんて。

最後のたくあんを口に含むと

パリ、ポリ、と
音がたち、顔を見合わせて、もっと音が鳴るようにして食べた。




日本酒を小さなグラスに1杯
それだけで
ほんのりと、優しい気持ちにかえってゆく。

もう1杯飲んだらあかんよ。
きっと、色っぽい気持ちにスイッチが入ってしまうもん、私。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


食べ終わり、片付けようとすると
「そんなこと、ええ。」
と、彼は私の手をひき、鍵のかかった部屋の前へ連れていく。

「ここ、さっき探検した?」
「開かへんやん。叩いても蹴っても。」
「蹴るな。」

笑いながら鍵をあける。


大きな立て鏡に
青みがかった紫色の浴衣が掛けられていた。


こんなことって。
じゃあ、さっきの玄関の下駄は、この浴衣に合わせたもの?


「これ、着て行こな。」

「私、ちゃんと着れるか・・・。」

「俺が着付けたる。」








「はっ?」
「今、いやらしいこと考えてるやろ。」
「その通りですが・・・。」
「アッハッハ。いいなぁ。お前のそういう答え。」
「褒めてんの?」

「俺、美容師やから、着付けできんねん。」
「建築士兼、面接官兼、営業マンでしょ。小さな建築会社兼住宅販売会社の。」
「なんでもデキル男と言ってくれ。」

「うん。料理は妻にしたいくらい、おいしかったわ。」
「お前みたいなエラそうな夫はいやや。」

たくさんのサプライズが嬉しくて、私は本当に素直な気持ちになってゆく。



「じゃあ素直になったところで、全部脱いではおってみて。」



「・・・本気で言ってる?」
「ちゃんと部屋は出ていくって。」
と、してやったりみたいな笑い顔で出ていった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


えええ?脱ぐの。ここで?今?
抱き合うためじゃあなくて、着物を着るために?


私は部屋の中で、声にならない独り言を言っている。
笑っている。
ちょっとバカみたいだ。

でもそれ以上は迷わなかった。
(いや最初から迷ってなどいなかったのだが)
2つ以外は・・・
たたんだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はおったよ。」

扉が開き、彼が私を見る。
ちゃんと彼の期待通り似合ってる?

「明日からソレで出勤したら。」
冗談言って笑っていられたのは、そこまで。



彼が私の手を、指先を
軽く持ち上げるようにして、私の両腕を少し広げた。

ドキドキでふらふらしそう。

真剣な面持ちの彼の顔がものすごく近い。
背が低い彼の顎を見ていた。

キレイな鋭角のライン。
口には腰紐を咥えている。

正面で襟先を合わせた。



と、ふわっと
閉じていた浴衣を彼が開いた。



一瞬のこと



だけど、私は恥ずかしいのか何なのかよくわからない感情で
いっぱいになり固まる。

そうとも知らず彼は手際よく、裾丈を気にしながら身頃をきめ上前を重ねた。

腰紐を巻きながら
「ちょっと苦しいかな。」
と彼が言う。



もう、もうかなり前から息苦しい。
苦しい。

近すぎ。




腰紐を結び、衿の合わせ具合を調節し、シワを引く。



甘い、甘い、究極に甘い拷問みたい。



私は片思いかもしれない相手の前で
人形のように立っているだけ。
思う通りに彼は行動する。



私は、ここで、いつもの意地悪な彼を思い出してしまった。
突っ立って言いなりになっている滑稽な私を見て
実は内心笑っているのではないか。

でも、鏡の中の紫色の着物を着た自分を見て
そうではないことがわかった。

こんなにキレイに着せてくれているんやもん。



「蝶々になりたい?貝になる?」



「?蝶々?」
「了解。」
彼に笑顔が戻った。
ふふ。なにか安心したような表情。

いつもこんなふうに笑えばいいのに。
そうしたら、私も素直になれるのに。



帯は器用に蝶々の形に結ばれた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「よっし。」
「ありがとう。似合ってるなぁ。」
「自画自賛か。」
「謙遜なんかせーへんねん。」
「アッハッハ。知ってる。」

彼はイスを鏡の前に置いた。
帯がきつくて、すわりづらい。



「すっげぇ色っぽくしたる。」



彼は私の髪を手にとると、手ぐしでといたり
ハラハラと1本ずつ落としてみたり
じーっと眺めてみたりしていた。



そう。
この、間、だった。



この妙な間が私に様々な想像をさせたり
そのうちなんだか恥ずかしくなって胸が高鳴るのだった。

今だって、さっさと髪をといてアップにしてくれたら
私はこんな気持ちにはならずにすんだはず。

彼の「間」が、私には居心地がいいんだか悪いんだか。
「間」は「魔」となって
私を夢うつつの世界へひきずり込もうとする。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「星の砂時計」


目をあけたまま
目を閉じてみる

細くて冷たい指で
髪の毛を優しく撫でられる悦び

好きな人が髪を結ってくれるなんて
なんて贅沢な時間なんだろう

砂時計
星の砂時計がサラサラと落ちてゆくような時間の進み方
そんな空間

ひと粒ひと粒の星屑が、私のこころに落とされてゆく
彼の手で
彼の瞳で
彼の声で




最後に彼は、銀細工のかんざしを挿してくれた。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「夏祭り」 「ななみの果て」「はんぶんこの月 」に拍手をしてくださった方々へ

拍手をありがとうございます。
どなたが、さかのぼって読んでくださったんでしょう。
ありがとう、本当に。
じわ~んと、あったかい気持ちになりました。
このあなたからの優しい気持ち、今日きっと誰かにお裾分けしますね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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この記事へのコメント

ののみちゃんっ

来たよ~

読ませて頂きました。
ドキドキしました(笑) 遠い昔を思い出したかも~(爆) 
ののみちゃん凄いよ!
引き込まれて、その状況や空間の息使いまで聞こえてきそうだわ・・ポッ

ののみちゃんの感性の豊かさは前から知ってたつもりだったけど
詩を書いてると だんだん小説に入っていきたくなるっていうか
自然にそうなると思うんだよね
ののみちゃんの感じるままに
何にもしばられる事なく書いていってね

たまに私の凡人の頭では ののみちゃんの深い言葉の意味が分からなくて
辿りつけない時があるの(笑)
何回も何回も読んで あぁ~そうなのかぁ~って
きっと私が感性で読めてないからなんだと思う・・にゃはははは
それほど ひとつの言葉に込められた意味がたくさんあるって事だからね

「小指」 まだまだ先があるのかな?
浴衣を着せてくれる彼の手さばきが素敵
「シワを引く」・・・・なんてとこ おっ?おぬしやるな! とかニヤってしちゃった(笑)
私もKに浴衣着せてあげたい!
そして 前見頃を合わせるために 
フワッと前を開くの・・・・・v-217・・妄想状態・・・v-217

でっ?・・・彼氏じゃないの?誰?




なんか凄いですね。
このストーリーは素直に信じられます。
色々な、ののみ様像が美しく輝いて見えました。
キラキラとね。

私は彼の様にはなれませんし、
タイプも全く違うのですが、
でも読んでいるうちに
なってしまったような錯覚に陥りました。

でも、かなりリアルな描写ですから、実際の事でしょうか?
周りに差し障りが起きたら一寸心配。
ののみさん初めまして、リンダと申します
ポエム読ませていただきました。
これは、女の子そのものの気持ちがよく
現れていますね。リンダも、遠い昔こんな
事があったと、いろいろ思い出してしまいました。久し振りに胸が、キュンとなりました。
息切れして、言葉にならないわ。。。
なんなん?これはフィクションorノンフィクション、、、もーどっちでもいいよ。
こんなに臨場感あるのって、久しく抱いてない感情だから、
普段機能してないスイッチが入ったら・・・落とし前つけてもらうからねっ(笑)
あんまり、こちら覗きたくないんだよね~
ののみマジック(み○うちゃん語録とはまた違う意味で)に堕ちてしまいそうなんやもん。
まっ!要は、ののみちゃんに惚れてしまうっちゅうことデス(^~^*)
引き込まれてゆく

ののみさんの書く 言葉 ひとつひとつに

想いがしっかりと 重なる

私も短編的な文章を今 執筆中ですが

やはり ののみさんのようにはいかないね

当たり前だけども・・・・・・・

ののみさんには ののみさんの感性がある

ドキドキするような そんな想いが駆け巡る

本当の私は きっと本気で人を愛したことが

ないって 最近想うんだ・・・・・・

どこか 冷めている

そんな自分がいるのが わかる・・・・・・
ぴあちゃん。

ぴあちゃ~ん。ぎゅぅ~~~・・・(激しく抱擁中)
やんe-414嫌がらんといて。
ほんまに許してな。あつかましくも呼びつけたりして。


ぴあちゃんは私の師匠やから(勝手に門下に入りこんだ)
どうしても、読んでもらって、助言聞きたかってん~。
そして、このどうしようもない恥ずかしさを笑って吹き飛ばしてほしかってん~。
「にゃはは」が聞けて嬉しいe-420(爆)

ドキドキ・・・
当時のその瞬間の気持ちをつきつめて思い出しながら書くもんやから
私自身もところどころバクバクしたり赤くなったり。
わはは(*`▽´*) ひとりで何してんだか?

ぴあちゃんは、あのオレンジ色のライトの中たくさんの写真に囲まれて
どんな風にして、あんなにも切ない小説を書いてるんやろ・・・(*⌒ー⌒)

ぴあちゃん。
目いっぱい嬉しいこと言ってくれて、励ましてくれて
奮い立たせてくれて、ありがとう!
きっと、初めて小説を書いた私の今の
迷っているような、弱気になっているような・・・
そんな気持ちを、ぴあちゃんは察してくれたんやね。
ありがとう。

『感じるままに 何にもしばられる事なく書いていってね』

これ。
私、ぴあちゃんにこれを言ってほしかったんやわって思った。
こんなふうに言ってくれて ありがとう。
このひと言が、ほんまに大きかった。

それでも、思いのままに書くと、ひとつ大きな難点がッッ( ̄○ ̄;)
書き終えたものを読んでビックリ。
これは・・・
これは・・・
単なる欲情女の物語?!

・・・文章って難しいね。(泣)

何回も読んでくれてたん。いやん。
ソレ どこや~(泣)
たくさんの人に「意味がわからない」って度々忠告受けてるんよ。
でも全然、改善できてへんねん。
そういうの、是非教えてほしいわ~( -""-;)

フッフッフ♪
『彼の手さばきが素敵』
ぴあちゃんに手さばきを褒めてもらえるとは
彼の言う元職業も、まんざら嘘でもないんやね?

アハハ(*^□^*)
私みたいに着せてもらうんじゃなくて、ぴあちゃんが着せたげんのん。
ぴあちゃん、鬼やな・・・(爆)

ぴあちゃんの小説は、色彩がはっきりしてる上に
音が今にも聞こえてきそう。
(静寂だったり雑踏の音だったり・・・)
今度の小説は、大きなキーとして「P」が登場して・・・
どんな色や音になるのか、本当に楽しみ♪
「P」をひく彼・・・それを聴き、見つめるあの人・・・
(すでに妄想入ってます)
私のは書いて読んでみて、悲しい事に色彩も音も全く無いのが判明。

ぴあちゃんが言ってくれた事を胸にちょっと難しいけど、続けてみるね。
いつか私の小説にも何か良い意味での「くせ」が
出てくるといいなぁ・・・。ぴあちゃんの色や音のように。

本当にありがとう。
ぴあちゃんのひと言ひと言が染みて嬉しかったです。ニコッ!









虹博さん。

『凄い』
虹博さんが私に言って下さった言葉こそ、私には凄いです。
美しいって言って下さったこと本当に嬉しかった~。
しかも、いろんな私像がきらきら?
アハハ(*^□^*)
そこまで褒められると、若干嘘くさかったり・・・
でもでも、やはり心にじわんと来ました。


タイプ、全く違いますか。
虹博さんは、傍若無人だったり(←褒めてます)
我が道をゆく(←褒めてますパート2) 人だったり・・・。
似てるなぁ~って思ったことあるんですが。

体験した事しか、書いたことの無い私です~ ( -""-;)
今回それが書き進める上でのネックになっております。
とんでもなく恥ずかしいんですぅぅ~(泣)
『周りに差し障りが起きたら』
ずーっと前の事なので支障は出ないと思ってたんやけど
近しい友人がこれを見たらどう思うか?とか・・・?
そういう事なんかな?ん?どうやろ?
リンダさん。

リンダさん、初めまして。ののみと申します。
壁カジさんのところでお名前、御見受けしておりました。
来てくださり、コメント残して下さり、嬉しいです~e-420e-420
『女の子そのものの気持ちがよく現れていますね。』
ほんとですか??だったら本当に嬉しいe-415
書くのはダダーっと書いて、書いてる最中は悩まないのですが
書き終えて読み返してみると、『女』のイヤ~な部分ばかりが目に入り
毎回、脱力感と羞恥心に襲われていますv-406
でも、リンダさんがそんなふうに言ってくださると
その負の気持ちを撃退できるかもしれません。
リンダさん、過去の事を思い出しながら読んで下さったんですね。
あ~嬉しいなぁ。

こちらへ来て下さってありがとうございました。
私もリンダさんのところへ伺わせて下さいね(*⌒ー⌒)






CHARちゃん。

『息切れして、言葉にならないわ。。。』
ギャハハ(*`▽´*) のっけから、その登場の仕方
私のしつこい羞恥心を吹き飛ばす勢いで、嬉しかったわe-420
あのね・・・(コッソリひっそりと)・・・ノンフィクションよ。
今までも何回か言ってしまっててんけど
詩も小説も自分の話やとか明言せーへんかたらよかったーv-406

『こんなに臨場感あるのって』
わっ。ほんまに?
え~と。これって褒めてくれてんのよね?(笑)
ありがとう。励ましてくれてe-420e-420すっごく嬉しいなぁ。
ええっ( ̄○ ̄;) 落とし前??
アハハ♪もぉ~だから関西女はコワいんや。
『こちら覗きたくない』 ??
そんなこと言うのは、その口かぁ~~v-17
あんe-414もっと惚れて惚れて。
たりんよ♪(←挑戦状)





とも~。

『引き込まれてゆく 』
ともはきっと、とも独特の世界観で
私の詩や小説に入りこんで読んでくれてるんやね。
とものコメントを読んでいると、それが静かに伝わってきて
いつもすごく嬉しいねん(*⌒ー⌒)

『言葉 ひとつひとつに 想いがしっかりと 重なる』
うう・・・そんなふうに表現してくれてありがとう。

フフ。短編小説、ひそかなブーム?(な、わけないか)

私には私の感性・・・かぁ・・・e-420
うん!ありがとう。そうやね。
これでも、今のまま書いてもええんよね?
というより、手を加えたり、書いたもの消さずに
今のまま書くからええんやね?きっと。

一緒にドキドキしてくれたん。あ~ん。それが嬉しいっ

どこか冷めているの?
ちょっと、いや、かなり羨ましいよ。
冷静に、少し静かに距離をおいて見れてる部分があるんやね。
私は距離をおくとか、不得意なので、うっとおしがられたり
嫌がられるねんなぁ~( -""-;)

本気で人を愛すること
うん。真正面からあらたまって考えると
これを判断するのはものすごく難しいというか
人それぞれな考え方があって・・・
答え、出ないよね。
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 ののみ

Author: ののみ

日々のこと
過去のこと

今日の私
あの頃の私

ゆっくりと綴っていきます

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